「U-35 Young Architect Japan. 多様な光あるガラス建築展」@AGC studio

京橋2丁目のAGC studioで3月6日から始まっている展覧会。「U-35 Young Architect Japan. 多様な光あるガラス建築展」は、35才以下の建築家7組を指名して行なわれた「ガラス建築の設計競技」において、ファイナリスト3組を含む7つの提案を紹介、なかでも最優秀賞案は、受賞特典としてAGC 旭硝子のガラスを使って1/1スケールでの展示。
最優秀作品(上の画)「primitive (glass) hut」
受賞・設計:高栄智史
構造:清本莉七
庭・協力:萩野彰大
本展協力・協賛:三芝硝材株式会社、株式会社キーテック、スリーワイ株式会社

ガラスの特性を生かした新しいガラス建築の可能性を拡げんとする同設計競技は、前回までは30才以下が対象だったが、今回からU-35に。合わせての開催は4回めとなる。
優秀賞(2組)
左:岩田知洋+山上弘「木漏れ日のテント」
 厚さ0.05mmの超薄板ガラス「SPOOL」(註.詳細:AGCリリースPDFで六つ目編みによるガラス屋根をという提案
右奥:植村遥「Flow」
 1次案ではプリント、2次ではシートを使って着色したガラスによるオーロラのようなガラス建築案
その他の応募案、出展者は伊藤友紀、魚谷剛紀、長谷川欣則、細海拓也の各氏。

昨年10月の公開審査で最優秀に選ばれた高栄智史氏は1986年生まれ(略歴:同氏の公式サイト
展示台左端の半透明な模型が応募当初の案。右端の黒い模型が本展のための模型。
展示パネルおよび4月24日に会場2Fのセミナールームで開催されたトークイベント「第58回デザインフォーラム」に登壇した関係者の発言をまとめると、高栄氏は当初、AGCの工場見学時に目にしたガラスの塊(註.AGC「現代の板ガラスの製造方法」ページ+U-35コンペ審査委員の太田浩史氏に教わったところ、フロートガラス製法の耐朽限度を超えた工場ラインは、安全のためにそのままの状態で放置して徐冷期間を設ける。その際に原材料が冷えて溶鉱炉内に巨大なガラスの塊ができるという)の強烈なインパクトを具現化したかったようだが、最終審査での講評や展示条件の制約を受けて、厚さ8mmのフロートガラス「サンユーログレー」を積層させて、時代を超えて美しいと感じてもらえるガラスの塊という原案コンセプトに準拠させている。
公開審査の様子:AGCデザインフォーラムレポート第50回5-4
本展公式サイト「AGC studio×AAF (註.AAF=NPO法人アートアンドアーキテクトフェスタ)」
本作品を目にした時、おそらく誰しもが"黒いガラス"で出来ていると思うだろう。使われている「サンユーログレー」は、ガラスに金属を混ぜて熱吸収率を高くした熱線吸収板ガラス。光の透過率が33%なので、作品のように7-9枚重ねると全体で黒く見える。逆に、作品内部に入るとよくわかるのだが、1-3枚張られた部分では外部の景色が透けて見える。高栄氏いわく「建材で唯一透明な不燃材」だが、実は厳密な透光率は100%に満たない。重ねればその分だけ光を遮って暗くなるという、知られざるガラスの特質を生かして「透明ではないガラス」を建築で表現した作品。
「primitive (glass) hut」の展開図(トークイベント配布資料より)を見ると、四方の壁がどのように貼られているかがようやくわかる。出入口側を除く3面で違うパターンになっている。中央通り側の三角形を左下の頂点から重ねたグラデーションの壁面は3枚×3=9枚、短辺側で9枚重ねた壁は200kgもある。
「primitive (glass) hut」は人力で組み立てられたものだが、外寸法910×1,820mmの"ハコ"の総重量は約1.1tもある。ガラスと聞くと、一般的には軽やかなイメージが今では一般的だが、今でこそガラスといえば=薄い平板ガラスだが、フロート製法が確率する以前は、欧州でもステンドグラスのような色ガラスが主流。日本に齎され「ギヤマン」や「ビードロ」と重宝された時代のガラスは厚みがあって重く、さらに遡れば正倉院の「白瑠璃碗」のようなものだった。「primitive (glass) hut」という作品タイトルには、ガラスの"primitive"な性質に立ち返る、という意図が込められている。
本作品は一畳茶室として使える"モバイル茶室"でもある。上の画は、茶室の"にじり口"から内部の眺め。下の画は24日に開催された茶会の様子(客は同設計競技で審査委員を務めた佐藤淳氏、中の様子をスマホで撮影しているのは同じく審査委員の平沼孝啓氏)。床には1枚の透明な板ガラスを2枚敷き、間に小さなLEDランプを仕込んでいる。
上の画、右奥:茶会のために用意された器もガラス製(デザイン:高栄智史氏)。
積層数の少ない側面から見ると、床下の無数の点光源に照らされた茶器自体が光っているかのよう。
作品内部より、出入のにじり口の見返り。
いったん中に入ると、外界の情報がほとんど遮断されるので、瞑想空間として機能する。両側に貼られた「サンユーログレー」が合わせ鏡のようになり、まさに宇宙空間のような広がりをみせる。見学時は作品内でこの"小宇宙"を体験すべし。
上の画は雨天時の画を含む。おススメは晴れた日の14-15時、作品のガラスを透過した光がプリズムを生み出すという。

U-35 Young Architect Japan. 多様な光あるガラス建築展」会期は5月30日まで(日・月曜、祝祭日休館)。開館は10-18時、金曜のみ19時まで。入場無料。

旭硝子「AGC studio」
www.agcstudio.jp/




+昼と夜の飲食メモ。
光井純&アソシエーツ建築設計事務所がデザイン監修を手掛けた《KIRARITO GINZA(キラリト ギンザ)》にて。

4F「Eggs'n Things(エッグスンシングス)」は原宿で行列ができる、生クリームてんこもり+パンケーキの店として有名。オムレツや卵料理もある。
ハワイアンカジュアルがコンセプトなので、入店時には「こんにちはアロハ〜♪」と迎えられ、食後は「ありがとうございましたマハロ〜」で送り出されるのがちと気恥ずかしい。

左の画はポテト付のスタンダードな「エッグスベネディクト」(消費税込¥1,250)。ドリンクが+オプションとなるのはザギン価格というべきか。
ポーチドエッグの下のパン生地は柔らかめ。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

B1F「俺のイタリアン TOKYO」は15時以降の営業(チャージ¥300)。平日のラストオーダーは22:15、閉店は23:00。フォーラム+懇親会終了後に予約なしで入店。この時間では1日4回の生演奏は終了。
公式サイト〜社長メッセージなどでも"ミシュラン星付き級の料理人が腕をふるい、高級店の3分の1の価格で提供する"を公言している、俺の株式会社が展開するイタリアン。「俺の」シリーズでは最大級、しかも話題のファッションビル@銀座1丁目に進出ということで、オープン前から何度かメディアに取り上げられていた店(報道例:昨年8月のWBSニュース
カウンターの立食席はわずか、殆どテーブル席で合わせて150席以上ある広い店内。金曜の22時過ぎでも大賑わいの店内。お通しで付いたパルメザンチーズの塊に手をつける間もなく、オーダーした料理がすぐに出てきた。
海老とマッシュルームのアヒージョ(¥650+税)。オリーブにんにくソースを熱々バケット(¥200+税)と共に食す。
厚切りイベリコ豚のベーコンと焼き筍(¥650+税)筍はちょっと硬かった。ベーコンはうまし。
アンチョビキャベツのピッツア(¥650+税)
カールスバーグ(¥580)やグラスワイン(¥650)などを含め、3人で約90分の飲み食いで、合計¥6,264ナリ。8丁目の「俺のイタリアンギンザ店」など各店共通のチャージ料一人¥300は発生するが、ザギンとしては世の評にたがわぬ価格破壊。
おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

キラリト ギンザ(KIRARITO GINZA)》にはこのほか、B1Fに「俺のフレンチTOKYO」(チャージ600円)、4Fに「MERCER BRUNCH GINZA TERRACE」、6FにDGT.が内装を手掛けた「dining gallery 銀座の金沢」などもあり。

キラリト ギンザ
www.kirarito-ginza.jp/