「中川政七商店 表参道店」オープン

中川政七商店の路面店が神宮前5丁目にオープン。店舗設計を担当した長坂常氏スキーマ建築計画ら関係者が出席し、1月13日の開店を前に披露会が催された。

中川政七商店 表参道店
住所:渋谷区神宮前5-43-7 1F
営業時間:11〜19時(無休)
www.yu-nakagawa.co.jp/


敷地は国連大学の裏手、青山の喧噪からは離れた住宅街。表参道駅からがやや近いが、明治神宮駅からもアクセス可。どちらも細い道がくねった突き当たりのような場所にある。

株式会社中川政七商店は1716年(享保元年)の創業、手績み手織りの奈良晒(ならざらし)の商いに始まり、現在ではこれら生活雑貨の企画・製造・卸・小売のほか、ブランドコンサルも手掛ける。共通のコンセプトは「日本の工芸を元気にする!」(詳細:中川政七商店 創業三百周年記念事業発表 記者会見
同社が全国展開する「遊 中川」「粋更kisara」「中川政七商店」などの自社ブランド、日本各地のパートナーブランドが集まる「大日本市」の商品も含めて約1,000アイテムを取り揃える。
店舗面積は43坪。何か実験的な試みもできるような場所として、動的可変な空間を長坂氏がデザイン。木とアクリルによる什器は同じモデュールで設計され、素材の組み合わせや棚板の位置を変えることで、様々な変化をつけられる。
本稿では判りにくいが、建物は南東側を旧都立青山病院の跡地である緑地に接しており、日中の店内は、ほぼ全面ガラス張りの緑地側から差し込む光に恵まれている。日が暮れると天井に配されたレール可動式のスポット照明が灯くものの、商業店舗としては抑えめ(同店の営業時間は11-19時)。什器の内側にも照明は見当たらない。長坂氏は「できるだけ自然光だけで商品を見せられるようにした」と語る。
「今回は空間への施しは殆どなし、家具(註.什器)でみせる。アクリルという透明な素材を木と同列で扱うことで、同じモデュールで均等になりがちなバランスを何となく崩すように」、「ぐるぐると店内を回遊してもらえるように配した」と長坂氏が説明した什器には、シンクなどが併設したミニキッチンも(上の画・左奥、パーティ用フィンガーフードを準備中)
オープニングパーティでは、白金台に今月オープンした、奈良県のコンセプト施設「ときのもり」の2階に入ったレストラン[CIEL ET SOL(シエル エ ソル)]がフードとドリンクを提供。
小紋柄の麻を貼ったメガネケースなどの小物類。表参道店では、現在は奈良にある「遊 中川本店」でしか行なっていない同ブランドの麻生地のオリジナルテキスタイル(下の画・奥)の切り売りに加え、「2&9」のくつしたと「motta」のハンカチへの刺繍サービスも表参道店限定で取り扱う。
店内には同社の創業三百周年を記念して制作されたオリジナル商品も並ぶ。糸井重里氏が会長を務める日本モノポリー協会監修、柿木原政広氏デザインによる「日本工芸板モノポリーZIPANGU」は5,000個限定。こちらの表参道店と、13日から17日まで東京ミッドタウン アトリウムで開催される「大日本市博覧会 東京博覧会」での先行販売となる。
海洋堂とコラボした「日本全国まめ郷土玩具蒐集」のガチャガチャ(カプセルフィギュア)も。
第八弾まで続き、ノーマルセットを集めると、47都道府県コンプリートとなる(中川政七商店 2015年9月リリース.pdf
レジ脇に置かれた、信楽の素焼きのオブジェは非売品。奈良を代表する聖獣・鹿に背に、今年の干支でもある猿がのっかっている。制作はステファニー・クエール氏(Stephanie Quayle)

プレスビューの冒頭、中川政七商店代表取締役 第十三代 中川淳氏が挨拶。店舗と2階にある東京事務所の披露と共に、新ブランド「花園樹斎(かえんじゅさい)」もデビューとなった。
花園樹斎のコンセプトは「"お持ち帰り"したい、日本の園芸」。中川政七商店がプロデュースする日本各地の工芸と、植物監修を務めるプラントハンターの西畠清順氏そら植物園がセレクトした植物をかけわせることで、現代のライフスタイルにあわせて、西洋とは価値観を異にする日本の園芸文化を今いちど見直し、季節ごとに植物を愛でるといった楽しみを味わってもらうことを目指す。ふさわしいブランド名として、江戸時代に隆盛した園芸文化を支えた、鉢物師や庭師などの職人たちを束ねていた植木商の役職名を冠した。
西畠氏が手にしているのは、中川政七商店がプロデュースする長崎県波佐見焼(製作:有限会社マルヒロの植木鉢に、西畠氏がセレクトしたカンノンチクをあわせたもの。
葉にみられる黄色い筋は、先天性のものではなく、生長の過程で葉が弱って変色した部分なのだが、西畠氏いわく、日本で培われてきた園芸センスからみれば、これらは珍品として愛でられる個性であるそうな。カンノンチクには番付(格付け)があり、横綱級ともなれば数百万円の値がつくと聞かされた時、取り囲んだプレスは総じて感嘆混じりの驚きの反応を示す。
店内の棚に並んだ梅の鉢植えも、開花した状態で売られているのが至極当然、という目でつい眺めてしまうが、西畠氏によれば、1月12日夜の披露にあわせて開花させるためには少なからずの人的労力がかかっている。
表参道店が入っているビル《表参道 ARTWORKS》は4階建てで、2階に中川政七商店の東京事務所が入居した(3,4階は別のスタジオ)。オフィスなので通常は非公開だが、この晩のプレスツアーでは見学と撮影がゆるされた。
事務所の内装は、1階と同じく、スキーマ建築計画の長坂常氏が担当。
緑地に面した東南側はデッキ付き。店舗同様に昼間は陽が燦々でかなり明るいとのこと。水野学氏がデザインした創業三百周年記念ポスターが貼られた反対側の壁は、ホワイトボード塗装となっている。
テーブルの主な素材は、長坂氏が手掛けた《ブルーボトルコーヒー 清澄白河 ロースタリー&カフェ》の内装でも見られたLSL合板。四方に脚は配さず、中央の台形部分で天板を支える。長坂氏いわく「なんとなく埴輪っぽく、かわいらしい感じを出してみた」。
各グループごと、大小5つのテーブルの表面には丸穴があけられ、西畠氏がみつくろった植物がひょろりと飛び出て、枝葉を広げる。
大きな打合せテーブルはもうひとつ、オフィスとエレベーターホールの間に、これも長坂氏がデザインした〈FLAT TABLE〉が置かれている。 事前のヒアリングでは社員のウケは今ひとつだったという色だが、納めてみればしっくりきて評判は上々とのこと。
長坂作品ではお馴染みの〈FLAT TABLE〉。天板の材はパイン材。表面に「うづくり」という加工を施してから、エポキシ樹脂を流し込んで成形する。「うづくり」による微妙な凹凸がそのまま奥行き感のある表情が浮かび上がる。
2階のエレベーターホール前の壁に掛けられたプレートは、新潟県燕市で創業二百周年を迎える玉川堂から贈られた、鎚起銅器によるもの。前述・三百周年記念商品のひとつとして、高岡市の能作を加えた3社で製作した「六角形 徳利・猪口」も50セット限定で販売、同商品にあわせた奈良の純米吟醸酒も。
三百周年記念商品は上記以外にも「新郷土玩具」なども展開。全国の取り扱いショップでの販売に先駆けて、中川政七商店 表参道店と、"工芸と遊ぶ五日間"と題して13日から東京ミッドタウン アトリウムを会場に開催される「大日本市 東京博覧会」でも先行販売される。

中川政七商店 公式サイト
www.yu-nakagawa.co.jp/




+飲食メモ。
「中川政七商店 表参道店」へのアクセスは、表参道駅からの場合、青山通りを渋谷方面へ進み、国連大学の手前、無印良品の1号店である[Found MUJI AOYAMA]の角を右折して、道なりに北上するとよい。未だかな?と不安を覚える辺りで左折すると目の前に現われる。
その手前の青山五丁目交差点に面した[KUA `AINA 青山本店] にて、プレスビュー前に軽く腹ごしらえ。昨秋のショールームイベント「MAIN」を見学した際、店頭の看板をみて以来ずっと気になっていたパンケーキを食す。
一番プレーンな「メープルホイップパンケーキ」は、食べやすいボリュームで、ドリンクとセットで消費税込み609円とリーズナボー(この界隈で同じ品をオーダーすると倍近い値段となる場合が多い)。メープルシロップ、好みの分かれるココナッツミルクはお好みで。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

KUA `AINA(クアアイナ)青山本店
www.kua-aina.com/shop/27.html