「空間を色で着せ替えよう!展」@CS デザインセンター

東日本橋にある(株)中川ケミカルのショールーム・CSデザインセンターで開催中の企画展「空間を色で着せ替えよう!展」を見学。
会場構成にインテリアデザイナーの五十嵐久枝氏を迎えた本展は、中川ケミカルが先月5日に発売を開始したカッティングシートの新色を、ごく身近な空間でもって展開し、空間提案する。先月27日から10月末までは先ず「問屋街カフェ」としてオープン、11月にオフィス空間、来年2月にはキッズルームへと、新色を使っての"着せ替え"がある。

空間デザイン:イガラシデザインスタジオ / 五十嵐久枝
照明デザイン: Y2 Lighting Design(ワイ・ツー・ライティングデザイン)/ 山下裕子

ネーミングは、この会場の立地、そして中川ケミカル創業の地でもある馬喰町一帯が、江戸時代から続く衣類の卸問屋街であることから(参考:東京日本橋横山町馬喰町問屋街・新道通り会サイト〜新道通りの歴史
左に6枚、右に7枚たてられたガラスのパーテーションには、江戸小紋のひとつ"分銅繫ぎ"をあしらった、新色のニュートラルグレースケールで構成されている。スタッフのオフィスルーム側の廊下は路地感を演出。
分銅繫ぎは縁起の良いいわゆる吉祥紋のひとつであり、波形状が同社の"川"の字をもイメージさせる。
五十嵐さんが配したこの分銅違い、パーテーションに沿って左右のそれぞれ端まで進んでいくと、線がだんだん太くなって線と柄が逆転する。
本展のもうひとつの見どころは、山下さんによるライティング。例えば、会場入口正面にある受付の背面。会場に足を運んだことがある人なら見覚えがあると思うが、正面右側はふだんは棚什器となっている。行灯のような光の演出は本展オリジナル。左側のキャビネットのツラ位置がやや出っ張っていることを逆手にとって、同じツラ位置で什器の表面にポリ合板を張り、さらに新色のペールトーンを貼って仕上げた。内側から光をあてた時に影が出ないよう、什器の板の縦のラインに照明配線を通している。
EVを出てパッと入ってくる視界の中に、今回の新色が全て収まっている。前述・ファサードのニュートラルグレースケール、ペールトーン、そしてセレクティッドホワイトだ。受付カウンター前板のボーダーがそれ。同じボーダー仕様はカフェ空間に置かれた長テーブルの装飾にも使われているのだが、(18日夜に開催されたレセプションの際、会場で五十嵐さんに教わるまで気付かなかったことに)垂直に立っている前板と、水平に置いたテーブル天板とでは光のあたり方(=あて方)が異なるので、同じボーダー仕様にも関わらず同じシートに見えない。これは偶然などではなく、原研哉氏監修によって生み出された、繊細な色味の違いで展開するセレクティドホワイトの「白」を、より美しくみせ、使い方によって豊かなバリエーションがあることを感じてもらいやすくするためのデザイン。

長テーブルの席でアイスの宇治抹茶ラテをいただきましたの画(ピンボケご容赦)。江戸情緒漂う「問屋街カフェ」らしく、お茶請けに「雷おこし」まで(今はキャンディー梱包があるのですね)。おいしゅうございました。ごちそうさまでした。

閑話休題。
こちらのテーブル、表面は新色シート、しかもマット仕様なのでわかりくいが、裏面をヒョイと覗いてみると、素材はガラス板。4枚の天板を連結し、ボーダーに紛れさせて、1枚の長いテーブルにみせている。
見上げたそこに、五十嵐さんデザインによるオリジナル照明が3つ(多面体ドームは昨年12月にデザイン・ハブで開催されたムサビの「いろは展」にも出展)。素材はダンボールで、内側に新色のシートをランダム貼りした(手前:ベールトーン、中央:ニュートラルグレースケール)。シェードのドームは3パターンの三角形で形成されている。照明が眩しいと新色を美しくみせる妨げとなるので、電球は上半分だけを照らすグレアレスなシルバーボールを採用。レセプション開催時にはフィラメントがゆっくりと明滅するパーティ演出になっていた。
ピアノ塗装の扉に貼られたペールトーンの数々。会場スタッフによれば、パステル調の淡い色のシートは、これまで「ありそうで無かった」とのこと。
実は3連のペンダントだけでは明るさが足りていないという長テーブル、そしてペールトーンによるカフェ壁面を照らす照明器具は、表立っては見えないようになっている(あら、こんなところにトカゲが一匹。これも新色? と思えば、さにあらず。7年くらい前から"棲み"ついているとのスタッフ談。会場内にまだ何匹か居るらしい)
ライティングで照らされたペールトーンが、分銅違いのガラスファサード越しに透けてみえるという演出効果。通りに面したガラス開口から入る自然光と、人工照明による計算された光が溶け込んだ会場となっている。
これもレセプション時に山下さんに教わったのだが、シートをガラスの表面に貼り、貼った側から光をあてると、ガラス自体に何ミリかの厚みがあるため、文字の影が裏側に落ちてしまい、シートの文字と影が重なって読みづらくなってしまう。それを避けるため、ライティングは裏側(スタッフオフィスルーム側)からとなる。
一角には青海波(せいがんは)の紋様も(意味やら由来をネットでググると、奥が深くて止まらなくなる)

空間を色で着せ替えよう!展」"問屋街カフェ"の会期は10月30日まで(土日祝休館)。開館は10:30〜18:30、入場無料。

CSデザインセンター
http://www.csdc.jp/