「Designing Body 美しい義足をつくる」@駒場東大

東京大学駒場IIキャンパスにて、4日から始まった「Designing Body 美しい義足をつくる」を見学。
東京大学生産技術研究所 機械・生態系部門の山中俊治教授が、慶應義塾大学在籍時を含む2008年から取り組んできた「美しい義足をつくるプロジェクト」の全貌を展示する初めての展覧会。義足メーカー、義肢装具士、陸上選手、山中俊治研究室のメンバーと共に駆け抜けてきた、7年におよぶデザインの軌跡である。

会場冒頭のあいさつで述べられているが、山中教授が「美しい義足をつくる」というプロジェクトを立ち上げたのは、2008年の北京五輪パラリンピックの映像で、義足をつけて疾走するランナーを目にしたのがきっかけ(同氏の著作『カーボン・ストリート 美しい義足に描く夢』[2012 白水社]が詳しい)
上の画は、同書にも登場する高桑早生選手のために共同開発された競技用義足シリーズ「Rabbit」の変遷。2009年に誕生したコンセプトモデルから、2013年のver.4.5まで5体が並ぶ。
この間、2009年には《21_21 DESIGN SIGHT》で山中氏がディレクターを務めた「骨展」が開催されている。関連イベントの最終回「未来の骨」には義足アスリートも出席、館外ガーデンを力強く疾走した姿が今でも心に残る。
このほか、同じく前述書籍に登場する自転車競技選手にデザインした2009年のコンセプトモデルなど数体を展示。普段は大きなガラス窓から外光が差し込むホワイトキューブの展示空間だが、本展では義体のマテリアルやカラーリングの美しさがひきたたせるためか、暗幕で閉め切ってライティングされている。
藤田征樹選手のために義肢装具士の齋藤拓氏が制作してきた自転車競技用義足を元に、デザインされたもの。
疾走用膝継手とエアロダイナミックカバー(2009)。素材はアルミ、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、ウレタン樹脂。
ステップ用膝継手 モックアップ(2009)。カントリースキーやテニスなど、柔軟な膝の動きが要求される選手のためのデザイン。
子供用義足 モックアップ(2010)
女性用大腿義足 モックアップ(2010)。材質はアルミと樹脂。通常は装着するという人肌を模したウレタンカバーを付けず、素材と構造の美しさを主張したデザイン。
最新の陸上競技用義足はドライカーボン製(2015)
また会場には、山中教授のドローイングなども併せて展示されている。

追記:11日(木) 17時より、下の画・中央の描きかけの絵をライブドローイングするとの告知あり。
山中俊治 公式Twitter : https://twitter.com/yam_eye
同展はMIAMIプロジェクト(内閣府戦略的イノベーション創造プログラム[SIP]プロジェクトの一環)で生まれた最新の成果も披露されている。いわゆる3Dプリンティングと呼ばれているAM:Additive Manufacturing技術によって成型された義足「Rami」。素材はナイロンとCFRP。
義足制作では装着する人の気持ち、フィット感を何より大事にするという。競技用では強度と軽量化も課題だ。肉体の重さと異なる無機質な物体を我が身として使いこなすということは、全身に相当の負荷がかかる筈。想像では遥かに及びもしないが。競技選手には、ただただ敬服の念しか抱かない。
「Designing Body 美しい義足をつくる」は6月14日まで。会期中無休、開館は11-19時。入場無料。会期中の関連イベントは下記公式サイトおよびfacebookでも告知される。
会場は駒II構内南西側の奥にあるS棟(旧60号館、今井公太郎+遠藤克彦建築研究所により2012年改修/参考リンク:遠藤克彦建築研究所サイト〜作品アーカイブ

「Designing Body 美しい義足をつくる」公式サイト
Designing Body Making Beautiful Prothetics
www.design-lab.iis.u-tokyo.ac.jp/exhibition/DesigningBody/





+飲食のメモ。
大学構内S棟は近くに学食を併設した大学生協駒II店がある(土日祝は休み。食堂の営業は平日11:30-14:00、17:00-20:00なので注意)

駒IIオリジナルの「キチンインドカレー」は460円ながらなかなかイケる味。19種類のスパイスも使い、水ではなくトマトで煮込んでいるとのこと。 トマトに含まれるリコピンの効能について、券売機前のウィンドーで解説しているのが東大らしいというべきか。
美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

参考: 本展とは関係ないが、同大学教養学部報の第555号、564号と数回にわたって「コマメシ ─駒場の飲食店案内―」なるレポートがアップされている(発行は2013年と2014年)。

面白い。