川辺直哉建築設計事務所《上目黒の住宅》オープンハウス

川辺直哉建築設計事務所が手掛けた《上目黒の住宅》を過日に見学。

設計管理:川辺直哉建築設計事務所
構造設計:多田脩二構造設計事務所
施工:(株)礎コラム
敷地面積:88.59平米
建築面積:51.45平米


左の画は内覧会時のもの(駐輪場置き場の工事前の段階)。北東に面した外観。屋根は北側斜線の影響を受けている。

敷地は第一種低層住宅専用地域の住宅密集地。家の前と正面に幅の狭い二項道路がT字に走る。
この《上目黒の住宅》では、正面の道路をそのまま内部に引き込むように玄関を設けた。
玄関先からの見上げ。準防火地域にあたることもあり、外壁はサイディング。
スチール亜鉛メッキの一枚板の端部をくいっと曲げた庇の下、外部に面した玄関ドアは横木を張っているが、扉厚の部分と室内側はシルバー塗装(註.下の画はレバーハンドルを除く部分を敢えて加工している)
玄関土間はモルタル。タイルが敷かれたホールが真っすぐ奥へと続く。
途中の各室は後述とし、ホールの最深部にある洗面空間から。
施主の希望で取り付けた横長の大きな洗面器+L字のカウンターはぶ厚い天板にもみえるが、同じ材を前板に取り付けたもの。洗面台の正面、上の画の右手に浴室がある。
浴室はホールと同じサイズのタイルで、目地もあわせているが、内部の白い空間に近づけた薄いグレーのタイルを貼った。
洗面空間の辺りから、玄関の見返り。
このように《上目黒の住宅》は奥行きがあり、外部の路地から玄関ドアを挟んで繋がっているような感じ。玄関の上は吹き抜けで、入って右側(上の画では左側)に主な居室を一列にまとめている。大きな木製框のガラス戸で仕切られた空間は寝室、壁を隔てた玄関側にこども部屋がある。
ホールの壁は湿式の左官仕上げ渋谷製作所の左官材「ラフター」の特注色)。路地との連続性と関連させて、外壁にも使える塗料を敢えて内壁の仕上げとした。白にベージュを混ぜたような落ち着いた色だが、プライベート空間の壁は(写真では判りにくいが)1・2階ともに白い(純白色ではない)
寝室の隣にあるトイレのドアの把手は、指を引っ掛けて開け閉めできるよう、扉の一部を僅かに切り欠いた仕様。内側には埋め込みタイプの把手が付いている。
1階トイレ。
1階 寝室。上の画の左手・造作の収納棚のさらに奥には広めのウォークインクローゼットがある。
玄関から入ってすぐ右手にある子ども部屋。間仕切壁を中心として線対称のつくり。
これからハシゴがわたされるが、空間の上がベッドで、その下がデスクまわり。
玄関前のオープン階段を上がり、2階へ向かう。階段の手摺りはスチールの造作、仕上げは玄関ドアの内側片面と同じシルバー塗装。
階段を上がりきったところから、1階の見下ろし。外部の路地と室内ホールのラインが連続していることがよくわかる。ホールの内法は約1,500ミリ(1.5メートル)
階段の途中、小窓の納まり。木製額縁を内部に露出させず、3ミリ厚で塗られた内壁の仕上げ=施工した職人の見事な手技を確認できる。
階段は無垢材も考えたが、反りの発生を考慮して既製品の積層パネルを採用。ノンスリップの溝は施主と相談して入れた。
2階ホールの廊下も1階と同じ300ミリ角のタイル貼り。南側のテラスとの間にピアノが置かれる予定。
テラスからの光が差し込む2階リビング。L字のカウンターにはテレビのほか、スピーカーも含めたオーディオ設備を置くため、必要な数のコード孔とコンセントが予め用意されている。カウンターの材はラワンベニヤ、その上の収納ボックスはタモ材で、仕上げは同じ塗料。オーク材のフローリングは1階よりも明るめの色とした。北側斜線の影響を受けた屋根がそのまま上部の空間に反映していることもあり、色が余計なノイズとならないよう、全体がナチュラルな印象にまとまる配色を心掛けたとのこと。
リビングから、北東側・キッチンの眺め。ダイニングテーブルを置く空間は確保しているが、限られた居室空間に対し、奥のパントリーを含めたキッチンまわりはやや広めにとった。
棚板下の照明がシンク付近を照らしてくれるキッチンカウンター、引き出し収納が付いた対面の作業台、どちらも造作。持っている食器や調理器具の数量から算出した収納スペースに収まる予定。
シンクおよびIHヒーターまわりの前壁は白い100角タイル貼り。左右の壁には、調理器具を吊り下げる可動フック付きバーを高低差をつけて設置している。奥様の希望を取り入れたと思われ、かなり使い勝手が良さそう。ステンレスカウンターはコーナー部分に切り込みを入れて巻き込んだ仕上げ。
キッチンカウンターの前に設けられた小さな開口(前述・階段途中にあった窓は、通常であれば上の画のような額縁がまわる)。隣地の緑が目に入り、借景のよう。小さいながら、北側の奥まった場所にあるこのキッチン空間に光をとりこみ、1+2階のホール空間を介して外部とも緩やかに繋がった窓だ。
階段のさらに上は書斎。その下のフロアは1階エントランスなので、法律上は2階の扱い。
天井高は2階のホールから天井梁下まで3,900、1階の土間からは6,400(共に単位はミリ)
真正面に外部の路地をまっすぐに望む書斎。カウンターはどっしりと落ち着いた配色。北東側なので通年で安定した外光がもたらされる。
家の前は狭い道路、両隣と陽のあたる南側の3方を囲まれた敷地。なかなか厳しい設計条件と思われるが、家の中に入ればそれらを全く感じさせず、逆にプラス側に引き込んだ《上目黒の住宅》である。

川辺直哉建築設計事務所
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