「ぎんざ遊映坐」にて隈研吾ドキュメンタリー上映中

東京・京橋3丁目にあるLIXILギャラリー2で開催中の クリエイションの未来展 第3回 隈研吾監修「岡博大展 -ぎんざ遊映坐 映智をよびつぐ-」を見る。
昨年9月にスタートした「クリエイションの未来展」は、清水敏男、宮田亮平、隈研吾、伊東豊雄の4名の監修者が、それぞれ独自のテーマを設定し、現在進行形の考えを具現化するような作品または出展者を選定して約3ヶ月毎に開催される。
隈研吾氏が初めて監修する今回、2つある会場のうち1つを本展限りのミニシアターに見立てた。前回は宮田氏のアート作品が並んだギャラリー空間には、隈氏がデザインしたモバイルシアターが出現、本展限りの「遊映坐」となっている。

タイトルの"遊映坐"とは"旅する映画館"の意。竹ひごで作られた球体の連なりによって空間が緩やかに仕切られ、来場者を奥のスクリーンへと誘う。
出展作家の岡博大(おか ひろもと)氏は、隈研吾氏が慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスSFCで教鞭を執っていた時の教え子。卒業後は新聞社に勤務、現在はフリーのジャーナリストで映画監督を生業とする。2010年以降、隈氏の講演会や建設現場に同行し、会場配布のリーフレットに寄稿した隈氏の言を借りれば「気付くとカメラを持って、そこに立っている」という岡氏の姿を、目撃している人も少なからずいるだろう。
上映作品は岡氏による「建築家 隈研吾 南三陸篇 ー発句ー」。
隣接する第二会場では、同じく岡氏によるドキュメンタリー「気仙大工」「ありがとう」を上映。

"発句"というサブタイトルの意味を、会場で配布されているリーフレットに追い、作家によるテキストの一部を以下に引用する。

「ぼくは、芭蕉の旅に同行した門人・曾良のように伴走している。隈先生が建築で句を詠む一方、ぼくは映画で句を詠み、旅日記をつける、といった風に。
俳句のように、未完成で不完全、断片的な映画に心引かれる。俳句は本来、俳諧連歌(連句)の発句(五七五)部分が独り立ちしたもの。余白に満ちた存在だ。」

また同リーフレットには、「会期中、各作品とも制作を続ける。映画の制作プロセス自体も作品として公開するドキュメンタリー・イン・プログレスの手法をとる。各作品は特報予告篇のような短篇から成り、会場で順次、続編を公開していく。」との予告文も。
ミニ・シアターはセルフビルド(組み立て式)で、弾力性と強度を持った竹ひごの性質を利用している。手順は先ず、竹ひごをしならせてインシュロックで留めて輪っかをつくり、3つの輪を輪ゴムで留めて球体=1ユニットとする。球体同士をインシュロックで接続、構造体とし、組み上げる。その数は約400個。本展は、隈氏が「ここを起点にして世界を旅していけばいいと考えている」という"竹ひごモバイル・シアター"の第1作。こけら落としを教え子の映像作品が飾る。
白い天幕とスクリーンは、LIXILグループ傘下である川島織物セルコンのカーテンを利用している。今回はギャラリーの壁に一部固定しているが、設置場所によっては幕を掛けるだけで成り立つようにしたいとの意向。シアター入口の「ぎんざ遊映坐」の看板は、常滑の「ものづくり工房」で焼かれたタイル。
出展作品「建築家 隈研吾 南三陸篇 ー発句ー」の上映時間は17分(ループ上映)。4年前に被災した地区に何度も足を運ぶ隈氏の姿をはじめ、隈研吾建築都市設計事務所がデザインを担当すると発表されたばかりの、南三陸町を流れる八幡川に架ける新たな「中橋」の打合せ風景などが映し出される。同橋の模型は下の画・映像の中だけでなく、隣接する第二会場にも展示中(撮影は不可)
「中橋」に関する報道:河北新報ニュース(2015.1.21)

クリエイションの未来展 第3回 隈研吾監修「岡博大展 -ぎんざ遊映坐 映智をよびつぐ-」会期は5月23日まで(水曜・4月29日、5月6日休館、)。オープンはLIXIL:GINZAの開館時間と同じく10-18時、入場無料。

LIXILギャラリー
http://www1.lixil.co.jp/gallery/




+飲食のメモ。
銀座1丁目にある食パン専門店「CENTRE THE BAKERY(セントル ザ・ベーカリー)」はLIXILギャラリーから徒歩2-3分の距離。但し、過日土曜の夕方に店の前を通りがかると、テイクアウトかイートイン待ちなのか定かではないが、大行列ができていたので要注意。
下の写真4点はオープン間もない頃、2013年6月下旬の撮影。
丸の内と渋谷に店を構える「VIRON(ヴィロン)」が手掛けている、食パンに特化した、超がつく高級ベーカリーで、テイクアウトも食事メニューもお値段はどれもかなり張る。そのプライスと味に負けないほどの超こだわり空間であることも大きな特色。
手前の広いスペースには、ルイスポールセンの「LCシャッターズ」とPHランプ、椅子は「セブンチェア」がズラリ。奥のソファ席に至っては本革仕様の「エッグチェア」、頭上には「アーティチョーク」を豪華に2つも吊るすなど、他に類をみない内装。壁に掛かったファブリックはマリメッコ。
VIRONはフランスから直輸入している小麦粉(レトロドール)で焼いたパンが有名で、パリのブラッセリーのような雰囲気だが、こちらの「CENTRE THE BAKERY」は北欧インテリアで統一。ソファ席の一角は高級ホテルのラウンジのよう。

単品で1,200円と高価なれども満足感いっぱいになるのが、下の画「チーズトースト」。目の前で、専用オーブンの熱で塊からじわじわと溶かしてくれるチーズを、選び抜かれたトースターで好みの焼き目をつけた、こだわり食パンに載せて食べるというもの。アニメの名作「アルプスの少女ハイジ」を愛する者でなくとも至福のメニュー。
オープン当初はこのラクレットオーブンが3台しかないと聞いたが、今は台数は増えたのであろうか。
散財覚悟で挑む価値ありの逸品である。

「CENTRE THE BAKERY(セントル ザ・ベーカリー)」は公式サイトもfacebookも無し。情報が不定期でアップされる「Brasserie VIRON(ブラッセリー ヴィロン)丸の内店」のfacebookを参考リンクとして。