安藤忠雄作品《21世紀キリスト教会》@広尾

安藤忠雄建築研究所が設計した「広尾の教会」こと《21世紀キリスト教会》を事前予約したうえで見学。
先週19日にNHK BSプレミアムで放送された番組「闘う建築家 安藤忠雄」でも建設中の様子が紹介されている作品。竣工は2014年8月。構造設計は金箱構造設計事務所、施工は鹿島建設(株)

同年8月23日に執り行われた献堂式に関する報道:
日刊建設工業新聞 2014年8月29日 14面記事
同紙 特集記事

安藤氏が設計した教会といえば、「光の教会」こと大阪の《茨木春日丘教会》が有名。ほかに《風の教会》や《水の教会》などもあるが、礼拝が定期的に行なわれる信者のための教会としては、本作は2作めにあたる。
21世紀キリスト教会》は地下鉄広尾駅から徒歩4-5分の住宅街に建つ。RC造地下1階+地上2階建て。地下は長方形、地上階は三角形(上の画は教会内に置かれていた模型)。住宅街の脇道を入った奥にあり、北側が唯一、4m道路に接する(生コンミキサー車をはじめ作業車の搬入など工事に難儀する様子が、前述番組でも流れていた)。地上階・二等辺三角形の頂点が東の方角を向く。
北側外観、エントランス前。安藤建築の代名詞といえるコンクリート打ち放しの作品。
外開きの観音扉の左右には透かしのクロス(十字架)が。
教会内部。風除室から1階エントランスホールの眺め。
フロアマップで確認すると、建物の形状がわかりやすい。
1階に礼拝堂、その真下に小さな三角形の「祈りの部屋(小礼拝堂)」がある。
1階 礼拝堂(席数139)
床の仕上げは無垢材のナラフローリング、壁はベイツガの重ね貼り(素材参照元:月刊『新建築』2015年1月号 掲載記事およびDB)
十字架を中心に二等辺三角形をした礼拝堂。向かって左側の大きな三角形が、入館前、北側の外からみえていた開口部。同じ採光用の開口が南側にもあり、左右正対称のレイアウト。前方の上部、壁面に入っている横スリットは空調の吹き出し口。
三角形の先端部、クロスが掲げられた祭壇付近。
十字架は宙に浮いているように見えるが、左右の両端が壁に固定されている。背面は天井から地下までガラススリットが入り、光が差し込む。
十字架の下はガラス張りで、洗礼式が執り行われる空間が見える。
祭壇前から礼拝堂場内の見返り。
天井はコンクリート打ち放しだが、床、壁、ベンチも含めて内装は木で統一。左右の壁に取り付けられた縦長のスピーカーも木で覆われ、一体感がある。
消化器収納(上の画の奥、白い扉)、火災探知機は、違和感なく壁面とほぼフラットの納まり。反対側の壁面にある照明スイッチも壁の中に収納され、扉で隠されている。探知機の茶色は特注か。
いったん礼拝堂の外に出て、ホールの階段を上がる。
教会スタッフに左右の引き戸を開けてもらい、礼拝堂2階席へ(80席)
2階席最前列から、祭壇の見下ろし。
左右に肘掛けがついた長椅子も安藤事務所がデザインした特注品。祭壇に近付くほどW幅が小さくなっている。
遠目には1枚フラットに見える、ベイツガ重ね貼りによる壁の仕上げ。
エントランスホールの階段。1階メンバーズライブラリーを案内された後、オフィス前にある階段で地下へ。
地下1階「祈りの部屋」こと小礼拝堂。
上の画は自然光での室内。下の画は照明点灯時。
光が洩れている奥の三角形の頂点が、1階の礼拝堂と先端を共有している部分。洗礼式が行なわれる石の水槽がある。
洗礼槽は花崗岩のジェットバーナー仕上げ(前述『新建築』2015年1月号掲載の図面より)。ぬるま湯が出る吐水口は水槽内の左側上下2カ所にあり。
ロールスクリーンを下ろして暗室としても使えるように、外光を遮ることも出来る観音扉が左右の壁に収納された状態。
洗礼槽から上にカメラを向け、1階礼拝堂の十字架の見上げ。洗礼式で信者の目に映る、ドラマチックな光景。
「祈りの空間」の室内見上げ。岩綿吸音板の白い天井。カーブを描き、表面には細いリブが入っている。
小礼拝堂のドア横の壁の仕上げ。よく見ると、設備機器類のスイッチが収められたボックスとクローゼットが収納されているとわかる。1階の礼拝堂も含めて全て掘り込み把手(ブッシュつまみ)。
地下には礼拝を終えた信者のためのカフェ「アイリスホール」も用意されている。地下の半分近くを占め、かなり広い。調理や配膳は信者の奉仕活動として殆どを賄う。
カフェの奥は、前面ガラス張りの開口部を挟んだドライエリア。礼拝堂と同じく東を向いた開口部から自然光が差し込み、照明を点けずともかなり明るい。庭は未だオリーブの鉢植えが置かれているだけだが、いずれグリーンが育ち、壁をつたって緑に覆われる予定。
小礼拝堂を挟んで、セミナーも開ける「キッズルーム」も用意されている。子供専用のトイレも完備(2つ下の画)
キッズルームのドライエリアから、地下1階-地上1階部分の三角形先端の眺め。
子供専用トイレ。
1階へ戻る途中、階段下からの見上げ。 建物のあちらこちらに開口部が設けられ、どこにいても光に溢れている、というのが見学して強く受けた印象。
1階オフィス前の階段室付近。左側にエレベーターが1基ある。
エントランスホールの壁には、花を飾るスペースが幾つか設けられている。上の画は礼拝堂2階席に続く階段下。消化器のボックスは同じ配列でスッキリ。
ホールの床は御影石のジェットバーナー仕上げ(前述『新建築』2015年1月号掲載の図面より)
21世紀キリスト教会》は個人が建てたもので、単立のプロテスタント教会(施主は牧師の増山浩史氏)。建つ前は南麻布のビルの1室で布教活動を行なっていた。1階エントランスホールの入口隅にある小さなパネルには、今回の献堂に尽くした聖職者として、増山牧師の父上(故人)の名が刻まれている。
個人所有の建物ではあるが、安藤忠雄作品ということで、内外から見学希望が絶えない。教会側が本来の業務の合間に可能な限り対応している様子が窺える(この日の昼前も明日出国するというキリスト教徒の観光客がアポイント無しで1組来訪)。教会側としては、祈りと一体となった本来の建物の姿を見て欲しい、という希望があり、日曜礼拝の場に一般見学者席が5つ用意され、3ヶ月先まで予約で埋まっていたが、今週から礼拝のない土曜日にリセットされた。撮影(および今回のブログ掲載)の了解を得たが、同教会公式サイトの見学案内に記されている通り、宗教空間であるという認識とマナー遵守は必要。
毎週月曜休館。

《21世紀キリスト教会》
www.21ccc.jp/




+飲食のメモ。
広尾には「神戸屋キッチン」や「BURDIGALA」など美味しいパン屋が多い。今回は教会近くの別の2店を初訪問、テイクアウトする。
広尾商店街にある「東京フロインドリーブ」は創業45年の独逸パン専門店。パイやチーズケーキもあり。
左:土曜限定の「ツォップ」(消費税込¥356)と、デニッシュプレッツェン(消費税込¥432)
前者は袋から取り出した瞬間、ほわわぁぁ〜ん、と良い香りが立ちのぼった(チーズが入っている?)。後者は積層生地がサックサク。美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

東京フロインドリーブ
http://freundlieb.web.fc2.com/index.html

駒沢通りを恵比寿方面へ。この時期は並木の桜が美しく、陽あたりの良い樹は満開に近かった。青い屋根が目印の「THE CITY BAKERY 広尾店」は通りに面し、広いイートインも併設。サンドイッチ、クロワッサンなど各種メニューが並ぶ販売ケースは、横一列買い占めたいくらいに魅力的。
「ソイブレッド1/2」(消費税別¥420)、「メープルベーコンビスケット」(消費税別¥270)、「ブルーベリーコーンマフィン」(消費税別¥250)
好みのザクザク系。どれも美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

THE CITY BAKERY
www.thecitybakery.jp/