番組視聴:NHK「ネクストワールド」最終回

NHKスペシャル「ネクストワールド」を見る。全5回の最終回は「人間のフロンティアはどこまで広がるのか」がテーマ。再放送は11日深夜(12日AM0:40)の予定。
イメージビジュアルが「火星居住」だったので、宇宙モノかと思っていたら、だけではなく、陸海空を居住空間とする未来都市構想も紹介された。以下は備忘録。

◎ 宇宙事業ベンチャー:スペースX
冷戦時代は国家の戦略事業だった宇宙開発だが、大幅なコストダウンも伴い、NPOや民間企業などが数多く参入する現代(参考:NHK「news watch 9」9月17日放送の特集:民間の力で"宇宙新時代")。そのうちの1社、スペースXのイーロン・マスク代表が取材に応じる(註.マスク氏は新型電気自動車「モデルS」の日本販売を昨年9月から開始したテスラ・モーターズのCEOでもある/参考.「news watch 9」9月9日放送 独占インタビュー

同社が開発した司令船のコックピットはいたってシンプル、クルーは「モデルS」のようなタッチパネルを操作して操縦する(映画『アポロ13』などのシーンで結露する機器類のスイッチレバーをひとつひとつ上げ下げする画に馴染んだ者には驚き)。長距離航行エンジンに至っては、業界のセオリーだった大型化ではなく、小型のエンジンを複数連結させる画期的な構造。仮に1つがトラブっても、プログラミング制御で全体でカバーできるという。地球の重力を振り切るまで必要なサブエンジンも、地上に回収して再利用=デブリが増えない!  回収テストは過日に成功(打ち上げは今年1月に失敗)

◎ 宇宙不動産
米国ラスベガスのホテル王ロバート・ビゲロー氏は、Bigelow Aerospace(ビゲロー・エアロスペース)を設立、NASAと共同で、エアで膨らませることで拡張可能な居住モジュールを開発中。筒型の1モジュールには大人6名が生活できる。年内には国際宇宙ステーションに連結させ、テストを開始予定。

◎ 宇宙でのモノづくり
NASAの試算では、人類は2040年代に火星に到達する見込み。オランダのNPO団体Mars One(マーズワン)では、火星に人類を片道切符で送り込み、永住させるプロジェクトを進めている。
その際に必要となってくるのが、地球を離れた場でのモノづくり。例えば、機器が故障して部品が欠損した場合、地上からの補充を待ってはいられない。3Dプリンターが活躍する。国際宇宙ステーションでも試験中。

◎ 世界最速EV
《ブルジュ・ドバイ》や《ブルジュ・ハリファ》に代表される超高層建築には、高速で昇降できるエレベーターが必須。現時点で世界最高のエレベーター上昇速度は時速60キロ、間もなく70キロを越える。日本のメーカー(註.日立製作所と思われる/2014年4月21日発表ニュースリリースが開発中の世界最速EVが、2016年に中国広州に竣工する高層ビルに納品予定。

◎ BIMと超高層建築
外内観、構造、配管、インテリアも含めて全てがミリ単位で予め計算できる BIM=Building Information Modeling のイノベーションと浸透に比例して、超高層建築の設計から竣工まで、大幅な納期短縮とコスト削減が可能に。《サグラダ・ファミリア》の工期が一気に短縮したのもBIM導入の結果。

◎ 海上都市「GREEN FLOAT」
海面上昇による水没する島の民を救うべく、赤道上の洋上に都市を浮かべて出現させるPJが、2040年完成を目指して進行中(註.清水建設と思われる/参考:同社サイト:シミズ・ドリーム「GREEN FLOAT」ページ)。ラッパを上に向けたような、高さ1000mのタワー棟を、睡蓮のような海面基盤に建設する。上層居住ブロックは5万人を収容、ひとつの都市を形成する。この海上都市構想もBIMによって設計が容易に。工事は現地に巨大3Dプリンターを持ち込み、ロボットが全自動で行なうという。
番組内で取材に応じたPJリーダー竹内氏による「TED×Tokyo」動画
(2011年5月掲載、所用12分、「GREEN FLOAT」への言及は後半・7分以降)
www.tedxtokyo.com/tedxtokyo-2011/program/masaki-takeuchi/

◎「ネクスト東京」PJ
東京湾上に高さ1,600mのハイパー超高層を建設する「ネクスト東京」構想。マスタープラン・アーキテクトは《六本木ヒルズ》を手がけたというデビッド・マロー。海上の強風対策として、台形状の構造物が連結し、1つのビルを成す。想定人口は50万人。最上階の富裕層居住区にはプールも。もはや海の上というより空に住むようなイメージ。


「ネクストワールド」のエンドロールには、ファンタジー営業部を有する前田建設工業が、データ提供元としてクレジットされていた。

「ネクストワールド」公式サイト
www.nhk.or.jp/nextworld/


同番組終了後、9日22時放送の番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の予告編が流れる。「世界初のビル解体、仲間と共に乗り越えろ」と題し、大成建設が手掛けた《赤坂プリンス》のジャッキダウン式解体工事の技術開発者を特集。