DRILL DESIGN 企画展「手前で変えると、遠くへ行ける」@(PLACE) by method

渋谷区東1丁目にある (PLACE) by method で開催中の「手前で変えると、遠くへ行ける」を見る。
林裕輔氏と安西葉子氏によるデザインスタジオ DRILL DESIGN が手掛けてきたプロジェクトのうち、3件に絞って取り上げる企画展。そしてこの不思議なタイトルの意味は、会場に足を運べば、そういうことかと納得できる。

「手前で考えると、
THINK ONE STEP BEFORE,

「デザインを手掛ける時、デザイナーはどこからスタートするのか。
 ーー会場内解説文(下の画)より引用し、以下に続く。
本展覧会では、DRILL DESIGNの仕事の中でも、フォルムや構造などに取り掛かる、もっと「手前」から思考をスタートさせた3つのプロジェクトをとり上げています。Paper-Wood、Gray-danは材料である素材自体をデザインしたプロジェクト。Molded Leatherは、つくるための加工技術からデザインしているプロジェクトです。」

Molded Leather:
「革製品を考える前に、加工方法を考える」
2012年の暮れに始まったPJで、現在進行中。
革や靴を加工してつくる際の金型を製造すると同時に、現在は革製品の製造販売も行なっている国内メーカーと恊働し、革の「抜き」と「成形」の技術だけで、縫製を用いない新しい製品をつくろうとしている。弁当箱のような、数種類の試作品が並ぶ。
壁には時系列が出ているので、PJの推移がわかりやすい。
広げたバックスキンの上に置かれた数種類の「抜き型」。この樹脂製の型に革を押し当て、乾燥させた上で成形していく。


「どこまでさかのぼって考えるかは、プロジェクトによってそれぞれ(略)」
ーー会場内解説文(下の画)より一部を抜粋。



遠くへ行ける。」
TO ACHIVE THE UNEXPECTED.

Paper-Wood:
「家具をデザインする前に、合板を考える」
裏方に徹することが多い合板を一気に"主役"にまで引き上げた「Paper-Wood」。
サブロク板の「Paper-Wood」を積み重ねた、シンプルながら大迫力の展示(1枚40kg×40枚もあるので、内側の板は中心部分をくり抜き、本展用に軽くしてある)
Paper-Wood」が世に出るまでの道のり。
DRILL DESIGN が家具の製作を依頼したことのある工房 FULLSWING と始めた「合板研究所」がスタート地点。「建築建材展2010」でデビューし、現在は旭川の滝澤ベニヤ株式会社が製造・販売を行なっている。
薄いシナ単板と色のついた紙を積層してつくられる「Paper-Wood」。塗装していないので木口部分の色が剥げることもなく、また身体に影響を及ぼしそうな接着剤も一切使っていない。販売元サイトの事例紹介に拠れば、商業施設の店頭什器や小学校のテーブルなどに使われている。個人的には小児歯科医院の待合室の什器になっていたを見たことがある@都内で。

Gray-dan:
「パッケージをデザインする前に、ダンボールを考える」
新聞と雑誌の古紙を使った「地券紙(ちけんし)」によるグレーのダンボールは、王子ペーパーライブラリーとの取り組みの中から生まれた。
ダンボールの表裏の紙に挟まれた部分(波形)に大きさの単位があると、会場で教わり初めて知った。「フルート」という。フルートが異なる3種類を組み合わせて積層し、グラデーションを出している。会場ではほかにも「どうしてダンボールは茶色なのか?」という長年の疑問もある程度解消できた。
「Gray-dan」は、DRILL DESIGN がデザインした TIME & STYLEの家具「VILLAGE chair」や、会場に吊るされていたモビール「energy flow」と「constellation」のデザインやブランド全体のディレクションを行なっている tempo の商品パッケージに使用されている。素材として購入可能とのこと。
手前:「Paper-Wood」を使ったスツールとベンチ。ガラスの仕切りを挟んで、奥:「Gray-dan」を積み重ねて作られたベンチ。1枚1枚積み重ね、両面テープで接着してつくられた。座り心地は柔らかくて悪くない。本展が始まる前、DRILL DESIGN の二人は「会期終了後にベンチ(=紙)の表面に座った人たちの重みで跡が残って、少しでこぼこするくらいになって欲しい」と語っていたそうだ。
会場では、そんな二人のこれまでの作品をまとめた『DRILL BOOK』も部数限定で販売。

DRILL DESIGN Facebook
https://www.facebook.com/pages/DRILL-DESIGN/683897914967614

DRILL DESIGN 企画展「手前で変えると、遠くへ行ける / THINK ONE STEP BEFORE,TO ACHIVE THE UNEXPECTED」の会期は11月9日まで。会場オープンは12-19時。入場無料。
会場:(PLACE) by method(渋谷区東1丁目3-1 カミニート2F)

method Facebook
https://ja-jp.facebook.com/wearemethod

なお、山田遊氏が率いる method inc.のオフィスであり、ギャラリー会場も併設したこちらの (PLACE) by method をデザインしたのは、14sd / Fouteen stones design の林洋介氏。作品DATEは下記を参照。
http://14sd.com/PLACE-by-method

さて、会場の場所は、予備知識無しで初めて行くと、エントランスが判りにくいかもしれない。以下はその多少の手助けなりとも。
下の画・右側の階段を上がった途中にある、ビルの2-3Fの案内表示。惹かれる飲食店多数。1Fに「おいしい」と評判のカレー専門店あり。
目印は「カミニート」という黒い看板。そして、超個性的なビルの外観だ。
ネット上の不動産情報によれば1978年の竣工。なんだかメタボリズムっぽい。設計者が気になる。テナントに入っている飲食店のTwitterに某有名建築家の名前があったが、事務所サイトの作品アーカイブに記載がない 。



+飲食のメモ。
「カミニート」ビルを出て、目の前の通りを南(左)へ直進してすぐ、角地にある「COFFEE HOUSE NISHIYA」。
渋谷2丁目交差点から (PLACE)by method へと向かう場合、この店の赤、青、黄色が目に入ったら「通り過ぎてしまった」ということ。

豊富なカフェメニュー。アルコール(ハートランド)あり、クロックムッシュあり、プリンあり、テンションが上がる。
初めての店なのでコーヒー(とプリン)にするつもりが、通されたカウンター席で改めてメニューを眺めている途中で眼がピタリと留まる。「エスプレッソバナナシェイク」(¥700)をオーダー。
ひとくち飲んだ瞬間、「ゔぁ、おいっしー」とオッサンなコメントを発しそうになったのを堪え、心の中でひたすら唸る。会計の際に「一番人気のドリンク」と教わる。
とても美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

COFFEE HOUSE NISHIYA
http://coffeehousenishiya.com/