「テラダモケイ×ナントカ 展」@プリズミックギャラリー

南青山のプリズミックギャラリーにて、10月17日から開催中の「テラダモケイ×ナントカ展」を見る。
「住宅編」「オフィス編」などに始まる「1/100建築模型用添景セット」のシリーズは、ワールドカップ開催にあわせたサッカー編(No.7)、今年1月発売の「海女さん編」(No.40)など、設計用途からは逸脱しつつも、最新作「稲刈り編」で通番53を数える。
2011年2月に「テラダモケイ(TERADA MOKEI)」を立ち上げて以降、企業やブランドとのコラボレーションも多数。そのうち近年の作品が今回展示されている。

そもそも「1/100建築模型用添景セット」が生まれるきっかけとなったのは、建築模型用の添景づくりの手数を少しでも減らそうと、模型もプラモデルづくりも大好きな寺田尚樹氏が、組み立てキットを模してデザインしたもの。グリーティングカードコースターなどの1/100シリーズも続々増えて、現在に至る。
会場入口に掲げられた展示概要のキャプションが、ユーモアにあふれていて素晴らしい。出展模型の制作と会場構成を行なったであろう、テラダデザイン一級建築士事務所のクレジットが「努力」となっている。

その「努力」と「ワザ」が結集した添景作品が並ぶ会場。
以下、発表された順に、本展展示の作品名またはシリーズ。
 ×塩尻市市民交流センター/えんぱーく(2010)
 ×ポカリスエット(2013)
 ×むかしばなし(2014)
 ×スラムダンク(2014)

×むかしばなし(2014)
今年4月に寺田模型出版から刊行された絵本「1/100ももたろう」と「1/100しらゆきひめ」に収録された全場面を、1/100建築模型用添景セット「桃太郎編(No.42)と「白雪姫編(No.43)でそれぞれ再現。後ろの壁面ではスライド上映も。
誰もが知っている「ももたろう」と「しらゆきひめ」も、テラダ・フィルターがかかると、あら不思議(クレジットには「協力:寺田家の家族」とあり)
上は「ももたろう」、下は「しらゆきひめ」のクライマックスシーン。この辺りからハナシが予想外の方向に進行していく。ラストシーンは会場で確認を。
テラダモケイの絵本」シリーズは、今後「うらしまたろう」や「しんでれら」などの配本を予定。寺田氏が切望する映画化が実現したら面白そう。

×スラムダンク(2014)監修:井上雄彦+アイティープランニング
今夏、六本木で開催された特別展「建築家・ガウディ×漫画家・井上雄彦」の会期中、ミュージアムショップで「湘北高校編」と「陵南高校編」を先行発売、同時に添景での展示も店内で開催され、話題を集めたシリーズ。厳選28シーンが会場によみがえる。
上段、左から、「がけっぷち」、「ほわちゃあ!」
下段、左から、「集合写真」、「21巻101ページ」、そして・・・。
涙なくしては読めぬ「バスケがしたいです・・・」。体育館の床の上、折れたモップもしっかりセットされている。このほか「さぁ、整列だ」「要チェックや!」等々。
陵南高校と湘北高校の競り合い。ダンクの音、黄色い「ル!カ!ワ!」や野太い「みっちゃーん!」の絶叫まで聞こえてきそう。
それにしても、正式商品化の時まで原作を「読んだことがありませんでした」とは、あまりに衝撃的な告白でした、寺田さん。

これら「添景セット」が生まれた源流を辿ると、テラダデザイン一級建築士事務所がサイン計画を担当した《塩尻市 市民交流センター/えんぱーく(2010年7月オープン、プロデュース・建築設計:柳澤潤/コンテンポラリーズの存在がある。
寺田事務所は同館のロゴデザイン、ピクトデザイン、サインデザインを担当。事務所として初めて本格的に取り組んだ、公共施設におけるサイン計画であり、後にテラダモケイのロゴマークとして再登場する「げんきくん(原器くん)」がここで誕生。

下の画:スラムダンクシリーズ「翔陽高校編(No.48)などが貼られたガラス壁面越しに、会場の外からの展示パネルの眺め。
「建築家が設計するのは空間ではなくそこで行なわれるアクティビティー。空間のデザインはあくまで手段で、目的は人間のより良い営みを提案すること。これはボクの持論でもあるのですが、サインも建物のためではなく、人のためでありたい。そう思いピクトには常に人が(=原器くんが)登場します」ーー「えんぱーく」展示の解説パネルより引用。

×ポカリスエット(2013)
「げんきくん」がサラリーマンに扮して大活躍した、企業CMのシリーズ。訴求テーマは「乾ききった日本のサラリーマンをポカリスエットで潤す」。
6秒動画共有ソフト「vine」は撮り直しがきかなかったそうで、過酷な現場がうかがい知れる(企画:大広、撮影:東宝映像美術)。「ゴジラ」の撮影チーム(!)も参加した製作陣は、あくまで身長17ミリのげんきくんのスケールにこだわり、撮影を敢行したという。
プロジェクト詳細: www.teradamokei.jp/special/teradamokei-pocarisweat.html

たった6秒間の中に、笑いと悲哀のドラマが展開する「Make a THIRSTY Scene」の全作品は、ネットでも見られるが、本展会場でもループ上映されている。
こちらもウェブでPDF版が読めるが、これまで発行された「月刊テラダニュース(責任編集:寺田尚樹)のバックナンバーの閲覧ファイルもあり。必読は「添景川柳」。編集部では随時、作品を募集中とのこと。
「テラダモケイ×ナントカ展」は南青山4丁目のプリズミックギャラリーにて、11月21日まで開催。オープンは平日10-18時、土日休廊。入場無料。

PRISMIC GALLERY #054「054 TERADA MOKEI X ? / テラダモケイ×ナントカ展」
http://www.prismic.co.jp/gallery/works/?p=27




+飲食のメモ。
プリズミックからのアクセス:外苑西通りを北上、最初の交差点を左折して直進、なだらかな坂を上がった右手に見えるは、微熱山丘こと「SunnyHills(サニーヒルズ)」。
2Fのカフェスペースでいただく「パイナップルケーキ」と中国茶のサービス。お茶はナイスなタイミングで注ぎ足してくれる。
良いお値段なのだが、ハマる味。1箱(5個入りで1,500円)を購入。ジャストサイズのトートバッグに入って渡される。

美味しゅうございました。ごちそうさまでした。

SunnyHills(サニーヒルズ)
www.sunnyhills.co.jp/