トラフが内装を手掛けたジェラート専門店「SNOW PICNIC」@中野区

トラフ建築設計事務所がジェラート専門店「SNOW PICNIC(スノーピクニック)」の店舗デザインを手掛けたと、同事務所公式サイト>9月1日更新のNEWSで知り、さっそく見に(食べに)行く(以下は昨日9月29日時点の情報)

店の立地は中野区新井1丁目、薬師あいロード商店街の中。JR/東京メトロ東西線中野駅北口から、サンモールとブロードウェイを抜けての所要は徒歩8分くらいか。定休は火曜日。
向かって左隣(北側)に、スペイン・バルセロナに本店がある、キャンディーショップ「papabubble(パパブブレ)」の日本1号店が在る。


ところで、以前は黒かった「papabubble中野店」の外観が、目立つ色=赤になっていた。後で聞いてみたところ、2店共に同じ経営(有限会社カンノ)とのこと。
ちなみにトラフ建築設計事務所は、ガラス越しに"西洋風金太郎飴"製造の一部始終を来店者に見せることで知られるpapabubbleが、物販だけを扱った初めての店舗「papabubble新宿ルミネエスト店」の内装を手掛けている。
以前あった仏洋菓子店が退店した後を改修し、「SNOW PICNIC」がオープンしたのは今年の6月。つくり置きを一切せず、その場で出来たてのジェラートを提供する。メニューは基本3種類、約3日のサイクルで変わり、店の公式Facebookに速報が出る。
ジェラート屋としては広めのイートインスペースを併設し、ドリンクメニューもある。注文は段差を2つ上がり、店の奥のカウンターにて。
いただく商品と店内の撮影、ブログ掲載可否を確認したところ、ご快諾いただけた。これから目の前で展開されるジェラートづくりの撮影ポイントまで教えてくれる
親切ぶり(なのに、「おーー!」と驚いてるうちにまんまと要所を撮り逃す)。
注文を受けてから作られるジェラートは、最初と途中で2回注入されるマイナス196度の液体窒素によって、元となる素材が瞬間的に冷やされ、店員の手で力強く、手際良くこねられて一気に完成する。液体窒素が入る時、周りの空気も冷やされるので、ものすごい量の霧が発生する(同店Facebookに引きの画像1点あり、7月15日掲載)。この白い霧を"雪山に"見立て、「雪山を見ながらピクニックをするみたいに、涼しげな庭のような空間で味わって欲しい」というのがこの店のコンセプトであり、店名「SNOW PICNIC」の由来である。
この"白い雪山"が映えるよう、レジと並んだキッチンカウンターの前板は黒一色。キッチンの作業台にも黒色系の大理石が張られていた。
9月29日のメニューと価格(変動あり)。2台のマシンで注文の都度1つずつ作るため、お客を待たせてしまうダブルやトリプルのオーダーには対応していない。ドリンクはセット割引あり(隣のpapabubbleでのレシートも割引対象になっていた)
この日、夕方の時点で数量限定の「いちじく」は完売。色の変わりやすい果物をジェラートにするのは難しく、保存がきかないとのこと。2択で迷った末、抹茶をいただく。
濃厚な抹茶。冷凍庫に保存する市販品と違ってカチンコチンに凍っておらず、ちょうど良い食べごろ。木の匙でも問題なく食べ進む。
追記:定休日(火曜日)を挟んで、いただいた「いちじく」。おいしゅうございました。
聞けば、ジェラートづくりの"師匠"は、阿佐ケ谷北にある「Gelateria SINCERITA(ジェラテリア シンチェリータ)」さん(ガッツポーズ!)。コーヒーにもこだわり、こちらの指南は阿佐ケ谷南の「FRESCO(フレスコ)」さんと教わる。
壁側に2つ並んだ2人席は、テーブル下に脚をつけず、天板を壁で支えているので、身がスッと入る。立ったり座ったりの動作をスムーズに行なえた。ウッド天板はレジカウンター前のフローリング材をアレンジしたものと思われる。
店内中央より、ガラスウォール越しに外の眺め。夕方の車両通行規制がかかった時間帯で、のんびり。道往く人が何人も店の看板や、中の様子を覗いていた。
通りに面したソファ席。
壁に掛けられた不思議な絵は、ドイツで使われている教材(volk und wissen volkseigener verlag berlin)
「Zauneidechse(ニワカナヘビ)」の解剖略図と、ガラス壁を挟んで店の看板。ドイツ教材画はもう一枚、魚の「FluBbarsch (Perca fluviatilis)」も有り。
ソファ席から、向かいの眺め。脚のない、宙に浮いたようなテーブルの仕様がよくわかる。
店内のあちらこちらに置かれた、ピクニック気分を盛り上げる雑貨類は、店のオーナーが世界各地で収集してきたもの。多肉植物の鉢もあったグリーンは、商業店舗の空調に耐えられるような強い種類を選んでいる。
エントランス付近。ソファ席までは段差をおさえ、ベビーカーを押して入店できるようにした。
改装する前、床には元から3段階のレベル差があった。来店者への足下喚起も兼ねて、段差ごとに床の仕上げを変えている。道路側の床には、オーナーが3年ほど前にスペインで見つけて気に入り、購入しておいた年代物のタイルを敷いた。良い感じに日焼けしているのをそのまま用いている。 

同じヴィンテージタイルは、フロア中央に置かれたロングテーブルの天板仕上げとしても使われている。マジョリカ柄のこのタイルは厚みが2cmほどあり、1枚でもかなり重い。これを14×4=76枚使っているロングテーブルは、四方を鉄板で囲み、下にも補強を入れて、2カ所で支えている。
3つの段差を横断しているこのロングテーブルに合う高さの椅子を揃えるのに苦労したという。真新しいものではなく、例えば小学校の図工室で使われていたような四角い木の椅子など、見合う品を探した。
2段め・フロア中央の仕上げはリノリウム。
虫食い穴などが残る2本の柱は飾りではなく、元からあった建物の構造体で、最低限の補修とオイル仕上げにより既存の状態をそのまま活かした。
上の画像の右奥、黒い空間の先には洗面室とトイレがある。同様に、キッチンのバックヤードも壁が黒く塗装されていて、柔らかい色で塗装された店内(ハレの空間)とは分け、少し"異空間"っぽい雰囲気になるよう狙っている。
洗面まわり。Aesopのハンドソープが置かれているのが、前述のヴィンテージタイル。厚みと重量感がわかるだろうか。
トイレの内部も壁は黒。飾られた絵は、主に地元の中野ブロードウェイで購入したもの。
キッチン前から道路側に向かって店内の眺め。
ロングテーブルは天板の一部に角孔をあけ、構造上の柱を通している。

以上、店で見聞したことを列記すると、いろんな仕掛けや新旧の素材が所々にあるのだが、雰囲気が見事に統一されている。トラフさんならではのデザインだと思った。
ジェラートとセットでいただいた「FRESCO」のアイスコーヒー。こちらも美味しかった。ごちそうさまでした。
そして、エアポケット的に店が空いた時、仕事の合間にいろいろと教えていただき、ありがとうございました。

「SNOW PICNIC」公式Facebook
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