「DOMANI・明日展」

国立新美術館》で開催中の展覧会「16th DOMANI・明日」へ。
本展は、1967年から文化庁が実施している新進芸術家海外研修制度(旧:芸術家在外研修、派遣期間は1、2、3年または80日間)の成果発表の場で、今回で開催16回めを数える。対象分野は、美術、音楽、舞踏、演劇、映画、メディア芸術、舞台美術等。建築は日本画、洋画、彫刻と並んで美術の領域に含まれ、1983年から制度対象に加えられている。


研修生の総数が30年で100名を越えたのを契機に、絵画・彫刻作品が中心だった「DOMANI展」に初めて出展した。ちなみに「DOMANI」とはイタリア語で「明日、未来」の意。
「未来の家」をテーマに43名の参加建築家による作品ブースが並ぶ「建築スペース」。とりまとめた代表幹事は第一期生である栗生明(1983年度派遣)、幹事を小川晋一(1983年度派遣、在ニューヨーク)、古谷誠章(1986年度派遣、在スイス)、林寛治(1995年度派遣、在伊)、松田達(2002年度派遣、在仏)の4氏。
会場構成は小川晋一氏。会場内の解説文に拠れば、「バザールみたいなイメージ」で、空間全体が「未来を担う芸術家たちが共有する『宇宙』であり『都市』であり、『未来の家』である」とし、出展者各個の「祝祭空間」が連続し、場に賑わいが生まれることを意図している。 以下、撮影可だった幾つかの作品を順不同で掲載する(カッコ内は派遣年度)。
左から「木造回遊式円楼」山岡嘉彌(1992)、「フォールディングハット」西森睦雄(1992)、「[イタリア中世の山岳都市]と[修道院の回廊空間]」竹内裕二(1989)各氏のブース。
左から「柱の建築」大松俊紀(1998)、「バートレット改修計画」今永和利(1996)、「イナリズム」松島史朗(1995、2000)各氏のブース。
左から「アルマジロ」田辺雄之(2006)、「円」瀬下淳子(2006)、(肝心のコルクが見えてませんが)「コルクの家」伊藤廉(2005)各氏のブース。
「ボルトレス・ジョイントによる木造ラーメン構造の研究」吉村靖孝(1999-2001年在欧、MVRDV在籍)
両側を通路に挟まれた中央のブースは、間仕切り壁が連続した、互い違いの展示構成に。

「NEXT TO THE LAST」山口尚之(2002年度派遣、在米、ABRF在籍)
天井から吊り下げられた白い糸に、家の形が全体で浮かび上がって見えるよう、一部が黒く塗装されている。


「空間充填パズルの家」松田達(2002-04年在仏)
松田氏は同展の幹事のひとりを務めている。


「100年後の未来の家」堀川秀夫(1994年度派遣、在伊)
 構造クレジット:名和研二

「こわさない・こわされない」原田真宏(2001年度派遣、在西、JOSÉ ANTONIO MARTÍNEZ LAPEÑA & ELÍAS TORRES Architects 在籍)
柱や梁などを再利用できる木造建築を例に、現代の高層建築物などで用いられる700h×300wの「H型鋼」を校倉式に組み上げることで、リ・ユースを可能とするシステム工法の提案。

会場レイアウトの都合で「空家」も発生。


休憩、+飲食のメモ。
黒川紀章氏(1934-2007)が設計した《国立新美術館》が開館したのは2007年1月。波打つようなガラスウォールの外観、逆円錐のコンクリート造形がインパクトを放つダイナミックなロビーなどが話題となった。吹き抜け大空間に浮かぶように、オープンした「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」も人気で、開館後暫くは入店待ちの長蛇の列だったのを覚えている。

今回は2Fの「サロン・ド・テ ロンド」にてひと休み。
「ガトー・フロマージュ+柑橘系ソース」のケーキセット(1,000円)だったと思う(うろ覚え)。ごちそうさまでした。
冬のこの時期、ガラスウォールから差し込む陽光が柔らかくて気持ちが良い。

レストランヒラマツが経営する「サロン・ド・テ ロンド」 http://www.hiramatsu.co.jp/cafe/nacc/rond.html




「16th DOMANI・明日」会場に戻り、先刻は通過した展示「アーティストスペース」を見る。
彫刻|「Zero Gravity」川上りえ(絵画|2006年度派遣、在米)

絵画|「living/ 中」ほか、小笠原美環(2001年度派遣、在独)

陶芸|「四大エレメントより、火および水」、壁掛「鳳凰」のシリーズ 徳丸鏡子(2003年度派遣、在米) 

徳丸作品を見たのは1999年、当時新宿にあったINAXのギャラリー「ガレリア・セラミカ」の企画展「陶 コズミックプランツ」が最初だった。


インスタレーション|「home」大野由美子(2007年度派遣、在チェコ) 10万ピースからなるインスタレーション、会期中、来場者も関与して可変する


現代美術|「白の棺」吉本直子(2006年度派遣、在英)
膨大な古着の白い衣類による塊。

奥の壁3面は天井近くまで埋め尽くされた「鼓動の庭」(2013-14)は圧倒的な迫力。サイズ可変のインスタレーション。

壁画・インスタレーション|土橋素子(2011年度派遣、在米)
多角形の天蓋や壁に描かれたアクリル絵画。

このほかメディア芸術ジャンルで榊原澄人氏が、デジタルドローイングを出展。

本展のポスターを飾っている写真は、大栗恵氏(2007年度派遣、在仏) の写真作品「Paysage d’une fenêtre / 窓景」のひとつ(2009)。

会期中は出展者によるギャラリー・トークやシンポジウムも開催され、参加者との質疑応答では、海外で得た経験、メリット/デメリットが率直に語られていた。

本展出展作家リストはこちら。作家名をクリックすると、プロフィールなど詳細情報が見られる。http://domani-ten.com/artist/

16th DOMANI・明日展 未来を担う美術家たち 建築×アート 〈文化庁芸術家在外研修の成果〉」は2014年1月26日まで。 


公式サイト
http://domani-ten.com